霊気を彫り出す彫刻家 大森暁生展 〈群馬県立館林美術館〉 作品紹介 ④
August 31, 2024
7月13日(土)〜 9月16日(月・祝)、群馬県立館林美術館にて 開催中の『 霊気を彫り出す彫刻家 大森暁生展 』 ですが、会期も二ヶ月と長期のため、都度少しずつ、各種イベント、出品作品、書籍グッズ等々の情報をアップしてまいりたいと思います。
《 作品紹介 ③ 「火の頭蓋」 CELT&COBRA × AKIO OHMORI」 (2003) 》
自身初めてのアトリエを荒川区町屋という下町に構え、訥々と手探りで作家活動を模索し7年目を迎えた2003年のこと。Celt&Cobra(ケルトアンドコブラ)というアパレルブランドさんから骸骨の燭台をつくって欲しいというご依頼をいただきました。
Celt&Cobraは元ブランキージェットシティーの照井利幸さんが当時主宰していたブランドで、とある方からのご紹介で事務所に伺うことになりました。自身、“ブランキー“は世代でもありますし、照井さんと初対面の自分はそれはそれは緊張し、絶対に遅刻してはいけないと約束の2時間も前に現地に着いてしまったのは我ながら微笑ましい思い出です。
そして「骸骨型の燭台は世界中にいくつもある。そのなかで一番のものをつくって欲しい。」そういうご要望を頂きました。「世界中で一番」という言葉に気持ちが奮い立ち、そして全身全霊で彫り上げた木彫原型を抱え再び事務所へと伺うと、普段強面の照井さんがニコッと優しい笑顔を浮かべ一目見ただけで一発OKをくださいました。
この燭台は背面が透かしぼりになっていて、火を灯すと透かし彫りの模様が後方に広がります。
“透かし彫り“という工芸的な要素、さらには“実用性“というものは、当時の彫刻の世界では何故だか馬鹿にされることでした。けれど、狭い業界のくだらない価値観に縛られるよりも実際に胸踊る演出となるのであれば、やってしまえばいいじゃないか。そう自身の背中を押してくれたのは、照井さんの太鼓判があったからかもしれません。
“透かし彫り“はその後「Butterfly in the frame」、「Glorious images」、今展新作の「鮮血のアゲハ」といった作品、そして実用性は鏡の作品やテーブルの作品など、今となっては自身のアイコンの作品群として定着し、皆様にも広く認識いただいています。
アパレルさんとの仕事は自身の活躍の場だけでなく、自身の価値観も大きく広げてくれました。
そして“裏原“と呼ばれる世界で兄貴的存在だった照井さんが僕を招き入れてくださったことで、次々と多くの人達が認めてくださり、アパレルという異世界にたくさんの仲間や友達ができました。
アパレル業界など門外漢だと思っていた自分を、その世界に温かく迎え入れてくれた照井さんは紛れもなく人生の恩人です。
ちなみに今展で「火の頭蓋」の後ろに「RAVEN」というカラスの脚を描いたポスターを展示してあります。これは2004年に照井さんが発表したアルバムで、REVENとは「略奪」という意味のほかに「カラス」という意味も。そこで照井さんから「大森くん、カラスつくってたよね」とご連絡を受け、そのジャケットおよび歌詞カード等のためにドローイングを描き下ろしました。
当時、渋谷のタワーレコードの外壁にこのジャケットを拡大印刷した巨大なバナー広告が掲示され、描いた本人が誰よりも腰を抜かしたのは言うまでもありません。
先日も久しぶりに照井さんのライブに伺いました。
20年以上ご縁が続いていることが何より嬉しく、そしてご自身に正直な自然体の生き方は永遠の憧れです。
彫刻家 大森暁生
火の頭蓋(CELT&COBRAコラボレーション作品)
H15.4×W14×D20(cm)
ブロンズ
2003
(展示写真)Photo : D.B.Factory
(作品単体写真)Photo : KATSURA ENDO