追悼 舟越 桂 さん
March 30, 2024
13年前のお話し、彫刻家 舟越桂さんが「個人はみな絶滅危惧種という存在」(集英社)という本を刊行された際、その書評を某紙面に寄稿したことがありました。
勿論はじめは「舟越桂さんの本を僕が評するなんて出来るわけがないです」と何度も固辞したのですが、編集者から「同業の方にしか説得力ある文章は書けません」と懇願され、畏れ多くもお受け致しました。
けれど困り果てた末、自身20代のころ籔内先生に連れられ舟越さんのアトリエ(まだご実家のお庭の一角で制作されていた頃)にお邪魔したときの興奮と感動を思いのままに書かせて頂き、書評ならぬ思い出文とさせて頂いたのです。
その後、刊行された紙面と共に、経緯と言い訳と「生意気を致しましてすみません」というお詫びを綴ったお手紙をお送りしたところ、今度は舟越さんからご丁寧なお手紙を頂き、そこにはこちらの気まずさを最大限慮ってくれる優しいお言葉が書かれており、ホッと胸を撫で下ろすとともにいたく感動したことを覚えています。
木彫家にとって巨星は永遠です。
舟越桂さん、どうか安らかに。
ありがとうございました。
彫刻家 大森暁生